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2009年10月31日
 ■ 長八美術館 漆喰芸術の殿堂

品川博氏の熱い職人魂を拝見したばかりの品川酔いが醒めぬ中、
24日(土)に南イタリアで大変お世話になった薩田建築スタジオ
薩田英男先生と、伊豆 長八美術館へ行って来ました。
早いもので開館25年になるそうです。

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伊豆の長八は江戸の左官として大活躍した名工です。
本来の左官の仕事はもとより長八の漆喰鏝絵は西洋のフレスコ画に
優るとも劣らない壁画技術として、芸術界でも高い評価を受けています。

久し振りの長八の作品にお目に掛かれると思うと興奮しますね。
実はオープンした当初、業界の旅行やイベントがこぞって開催され、
6回ほど見学に来ていたのです。
その後20年以上も経っての見学に何か特別な思いが込み上げてきました。

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玄間まで土佐漆喰となまこ壁が迎えてくれました。
綺麗に手入れされている美術館は開館当時と変わらない美しさです。
そのころは今一つ漆喰に対する知識が不足していて長八の凄さを
理解出来ずにいたと思います。大変遺憾なことです。

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「春暁の図」です。
長八の代表作で漆喰を鏝で塗り付け、色彩を自由に駆使して
書きあげる技法は鏝絵の素晴らしさを余すところ無く伝える秀作です。

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「近江のお兼」
絵を描く技術を狩野派に学び、彫刻の技術を修めて左官の技に応用し
漆喰を用いて華麗な色彩を施す長八独自の鏝絵の芸術を完成させました。

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どれも躍動感溢れる作品に瞬きも忘れるほど凝視してしまいました。

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話す声が聞こえそうな作品です。

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大雨の音まで伝わる迫力です。

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こちらを見つめられ、思わず心が和む作品ですね。

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彫塑の技術が生んだ左官漆喰彫刻です。

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足袋を履いているのが解る、見えない所に長八の遊び心が伺えるとあります。
う〜ん 本当に見ていて楽しくなってきます。

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長八美術館に隣接するギャラリーでは、何と
藤田洋三先生の写真展が開催されていました。
なまこ壁の素晴らしさを迫力のある生きた写真で世界に伝える
藤田ワールドが展開されています。
ダブルで美味しい伊豆見学会となりました。

本物、良い物を見ることの大切さ・・・。
そして、昔も今もそれを作る人、それを伝える人々の偉大さを改めて
知ったように思います。
職人の職人による職人のための美術館。
その粋を凝らした左官の技を結集した世界にただただ感動あるのみです。

是非皆様もお出かけ下さい。
興奮する事間違い無しです。

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2009年10月23日
 ■ 品川 博 言葉を無くす左官美技の世界

遂に念願叶い、兵庫県加古川市の品川博様のお宅へお邪魔して参りました。

品川氏は左官の名工として究極の技を駆使し、とんでもなくすばらしい作品を
次から次と生み出すスーパーマンです。
全国の社寺や公共施設のデザイン壁などを多く手掛け、最近の作品では、
高野山奥の院六地蔵噂灯篭塔の修復、関西大学2号館、及び父母会館の
7m×2mの鏝絵2大作を手掛け多くの人に感動を与えたばかりです。
その他小さい作品ではセメントで出来た本物と見間違う、蟻とか、魚の干物、
スルメイカ、サンショウウオ(あまりのリアルさに本当にびっくりします)など、
もの凄く沢山の作品を作りだしています。

そして作品だけに留まらず、氏のお兄様の品川清志氏と新しい鏝や道具を常に
開発、製造し意欲的に左官の発展に寄与されています。
特に最近人気の「漆喰押さえ鏝」は、かつてバリバリの野丁場時代にべら棒な
面積の漆喰壁を前にして、どうやって効率よく仕上げるか悩んだ末に開発した
漆喰を楽しく塗る鏝で、漆喰仕上げにとって革命的な発明です。


早速お宅へ上がり込み品川氏のお話を伺います。

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品川氏のアトリエです。
三木市から依頼され製作中の鏝絵を前に語り始めた品川氏の体からは、
オーラが出ていて、その周りの全ての物が輝いています。

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今回伺ったメインのテーマは、ドライウオッシュ工法(水を使わない洗い出し工法)
を見せていただく事です。
オオッ ドライウオッシュ工法で時計のパネルが出来上がっていました。

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綺麗な海岸の砂です。
これを使って彩豊かに仕上げる訳ですね。

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なるほど拾い分けていくと、ご覧のように様々な自然に磨かれた貝殻が
沢山出て来ます。

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綺麗な桃色の貝殻ですね。

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そして、道具です。

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ドライウオッシュ工法用に開発されたワイヤーブラシです。
とても細い繊細なワイヤーです。

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そして、面を抑える専用面引きです。
これも、お兄さんの清志氏が一晩で作った逸品です。

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塗り付けたネタが、かなり締まって来た状態でブラシを垂直に当て、
ソフトなワイヤーの掻く感触を大事に表面を掻き落していきます。

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出来あがったサンプルを見せていただきました。
細かい砂状のものまで一粒々が綺麗に表現されています。
小粒ながら、それぞれが自分を主張しているように。
繊細な面でありながら、きっちりと窪みを表現しています。

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可愛いキューブ型の作品です。
何か宝物のように輝いています。

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こちらは一枚の中に流れを意識したデザインで、
暗くすれば流れ星のように白い細かい砂と、色彩鮮やかな貝殻が
素晴らしく美しく光り輝く作品です。

品川氏曰く、「ごの技法で今迄は難しかったかなり細かい砂状のものまで
洗い出し仕上げが可能にりました。どんな素材でも使って表現する事が出来ます。
可能性が無限になりました。」 

実はこの技、過去の失敗から生まれた事を話してくれました。
氏の言葉がとても重く心に響いた瞬間でした。

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現在、製作中の三木市から依頼された鏝絵です。
製作するにあたって品川氏がこだわる世界を聞かせていただきました。

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驚きの鏝絵用の鏝です。
とても小さいものでもしっかりと焼きの入ったしなりの良い鏝です。
これら全てが兄清志氏との共同開発のグッズなのです。

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品川氏は原画を見て、描かれる人物の履くワラジの様子が納得がいかず、
氏のお母様の作られたワラジを参考に本当の履き方で描く事にされたそうです。
そこまでこだわる品川氏だからこそ、素晴らしい作品が出来上がるのですね。

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見事な深みのある臨場感は技量の凄さを表しています。
今にも額から飛び出して来そうな出来映えですね。
鏝絵って素晴らしい!

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ふと見ると、ヤドカリ君達が挨拶に来てくれました。
ようこそと言ってくれた様な気がしました。
本当に生きている感じなんです。

改めて品川博氏のもの凄さを知りました。
一切の妥協は無しに徹底して材料を研究し、技を磨き挑戦し続ける
その姿を拝見し、自分の心の中にただ感動したでは済ませれない
もっと大きな左官維新が起きたような気がしました。

職人文化を忘れ掛けてる昨今、もっと多くの人に知って欲しい
品川博氏の世界でした。

品川様、お忙しい時にも拘わらずご指導を頂きありがとう御座いました。
益々のご活躍をお祈り申し上げます。


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2009年10月08日
 ■ 工学院大学 校外授業

10月3日(金)工学院大学大学院 田村雅紀先生の校外授業として、
弊社見学会が行われました。

田村先生は、工学院大学 工学部建築都市デザイン学科
生産系・環境材料学研究室 准教授としてご活躍されておられます。

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テーマは、実践的・環境材料持論
建築資材総合商社 富沢建材株式会社の視察

建築物のライフサイクル全体における資材調達段階を意識し、
環境に根付く材料とその施工道具の特製に関して考察していただきました。

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田村先生には以前から建材の事でいろいろとお世話になっています。
今回のお手伝いは、学生の皆さんに弊社の在庫する建材について、
性能や使用法などを解説することで、倉庫内のほぼ全般を見学して
いただきました。
特に自然素材の漆喰、石灰系や土壁材については関心が深く、
興味を示していただいた様です。

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展示室では自然素材の良さを体験していただきました。
皆さんの真剣な見学振りを拝見して、とても嬉しく思いました。

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事務所内の展示物や鏝等、道具類も手に取って話が盛り上がります。
1時間半程の授業でしたが、勉学に大変意欲的な皆さんの迫力に終始
緊張と楽しさが繰り返す奥深い一時となりました。

今後の環境時代に対応していくために、建設業はどのようなマネジメントを
実行する必要があるかを考えていただき、今後の建設業の発展の為
ご活躍願いたいと思います。

熱心な皆様にどれだけお役に立ったかは分かりませんが、
今後も一緒に勉強させて頂ければ幸いです。

ご参加の学生の皆様、ありがとうございました。
田村先生、今後もご指導をよろしくお願い致します。

追伸:田村先生の授業を受けてみたくなりました。


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