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2009年10月23日
遂に念願叶い、兵庫県加古川市の品川博様のお宅へお邪魔して参りました。
品川氏は左官の名工として究極の技を駆使し、とんでもなくすばらしい作品を
次から次と生み出すスーパーマンです。
全国の社寺や公共施設のデザイン壁などを多く手掛け、最近の作品では、
高野山奥の院六地蔵噂灯篭塔の修復、関西大学2号館、及び父母会館の
7m×2mの鏝絵2大作を手掛け多くの人に感動を与えたばかりです。
その他小さい作品ではセメントで出来た本物と見間違う、蟻とか、魚の干物、
スルメイカ、サンショウウオ(あまりのリアルさに本当にびっくりします)など、
もの凄く沢山の作品を作りだしています。
そして作品だけに留まらず、氏のお兄様の品川清志氏と新しい鏝や道具を常に
開発、製造し意欲的に左官の発展に寄与されています。
特に最近人気の「漆喰押さえ鏝」は、かつてバリバリの野丁場時代にべら棒な
面積の漆喰壁を前にして、どうやって効率よく仕上げるか悩んだ末に開発した
漆喰を楽しく塗る鏝で、漆喰仕上げにとって革命的な発明です。
早速お宅へ上がり込み品川氏のお話を伺います。
品川氏のアトリエです。
三木市から依頼され製作中の鏝絵を前に語り始めた品川氏の体からは、
オーラが出ていて、その周りの全ての物が輝いています。
今回伺ったメインのテーマは、ドライウオッシュ工法(水を使わない洗い出し工法)
を見せていただく事です。
オオッ ドライウオッシュ工法で時計のパネルが出来上がっていました。
綺麗な海岸の砂です。
これを使って彩豊かに仕上げる訳ですね。
なるほど拾い分けていくと、ご覧のように様々な自然に磨かれた貝殻が
沢山出て来ます。
綺麗な桃色の貝殻ですね。
そして、道具です。
ドライウオッシュ工法用に開発されたワイヤーブラシです。
とても細い繊細なワイヤーです。
そして、面を抑える専用面引きです。
これも、お兄さんの清志氏が一晩で作った逸品です。
塗り付けたネタが、かなり締まって来た状態でブラシを垂直に当て、
ソフトなワイヤーの掻く感触を大事に表面を掻き落していきます。
出来あがったサンプルを見せていただきました。
細かい砂状のものまで一粒々が綺麗に表現されています。
小粒ながら、それぞれが自分を主張しているように。
繊細な面でありながら、きっちりと窪みを表現しています。
可愛いキューブ型の作品です。
何か宝物のように輝いています。
こちらは一枚の中に流れを意識したデザインで、
暗くすれば流れ星のように白い細かい砂と、色彩鮮やかな貝殻が
素晴らしく美しく光り輝く作品です。
品川氏曰く、「ごの技法で今迄は難しかったかなり細かい砂状のものまで
洗い出し仕上げが可能にりました。どんな素材でも使って表現する事が出来ます。
可能性が無限になりました。」
実はこの技、過去の失敗から生まれた事を話してくれました。
氏の言葉がとても重く心に響いた瞬間でした。
現在、製作中の三木市から依頼された鏝絵です。
製作するにあたって品川氏がこだわる世界を聞かせていただきました。
驚きの鏝絵用の鏝です。
とても小さいものでもしっかりと焼きの入ったしなりの良い鏝です。
これら全てが兄清志氏との共同開発のグッズなのです。
品川氏は原画を見て、描かれる人物の履くワラジの様子が納得がいかず、
氏のお母様の作られたワラジを参考に本当の履き方で描く事にされたそうです。
そこまでこだわる品川氏だからこそ、素晴らしい作品が出来上がるのですね。
見事な深みのある臨場感は技量の凄さを表しています。
今にも額から飛び出して来そうな出来映えですね。
鏝絵って素晴らしい!
ふと見ると、ヤドカリ君達が挨拶に来てくれました。
ようこそと言ってくれた様な気がしました。
本当に生きている感じなんです。
改めて品川博氏のもの凄さを知りました。
一切の妥協は無しに徹底して材料を研究し、技を磨き挑戦し続ける
その姿を拝見し、自分の心の中にただ感動したでは済ませれない
もっと大きな左官維新が起きたような気がしました。
職人文化を忘れ掛けてる昨今、もっと多くの人に知って欲しい
品川博氏の世界でした。
品川様、お忙しい時にも拘わらずご指導を頂きありがとう御座いました。
益々のご活躍をお祈り申し上げます。
投稿者 Tomizawa : 2009年10月23日 20:15