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2007年09月22日

 ■ 土壁礼賛 「銀座の大津壁」   

世の中にはとても嬉しいことがあるものですね。
本当に素晴らしい塗り壁事件が起こったのです!
何故嬉しかったかは最後に・・・。

それは、銀座7丁目の粋な割烹料理店での出来事でした。

素晴らしい 「沖縄土 大津磨き壁」 です。

先ずは、3連発で見事な大壁の仕上がりをご覧下さい。

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如何ですか、この虫籠窓の美しさ!

小沼左官 小沼氏にお声を掛けて頂き大津壁の施工を見学させて頂きました。
それでは施工行程をご紹介します。

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ハンダ土(中塗り土+石灰+角叉のり+ワラスサ)を塗り付けた
下地壁です。
充分に乾燥した下地はガチンガチンで非常に強度が出ています。
そこへ、灰土(聚楽土+石灰+みじんスサ)を塗る前に水湿しを
行います。

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灰土の塗り付け開始です。
周り縁から素早く均一に塗り付けます。

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土物の塗り付けは水との勝負。
下地の水引具合や表面の乾燥具合などバランスと
タイミングを取るのが大変です。
なるべく全面が時間差なく塗終えるよう作業します。

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この段階で仕上げ?
と言って良いほど綺麗に平らに押さえ込んで行きます。

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押さえ込んで行くと水分の多い部分が出てきます。
ムラ乾きを調整し全面同一な下地にする為、
新聞紙を貼り付けてその上を鏝で押さえ水分を吸い取ります。
手の平で触れて確認し何度もこの作業を繰り返します。

下地の段階でこんなに手を掛けているんですね。

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さあ、大事に寝かせて置いた逸品!
引土(色土+石灰+紙スサ)の塗り付けです。

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先ずは虫籠窓の周りから慎重に。

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下地に擦り込むように素早く均一な厚みで塗り付けます。

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この行程で2回塗り付けを行います。

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2回引土を塗り終えた後、水引具合を見て全面押さえに入ります。

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鏝に力と心を込めて真剣に壁に向かう小沼氏です。

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湯河原の長田左官工業 長田氏がスーパーミンク掛けを起こない
表面に浮いた水分を拭き取ります。

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木村左官工業所の木村氏も技を駆使しての大津磨きです。

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奥の間は本格的聚楽壁の日本間です。
大津壁と最高の和のコンビネーションですね。

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虫籠窓越しに見る小沼氏の仕事振り。
大津壁に真剣に取り組むその表情は・・・
冗談ばかり言っている普段の姿とは打って変わって激マジです!

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そして作業は細かい部分へと入って行きます。
神経を集中して面を取ります。

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ただ面を取るだけでなく、大津壁の場合は押さえ磨きながらの作業で
ひたすら慎重にじっくりと進めて行きます。

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大壁と同じ面の役物は同時進行で仕上げるため、
仕上げて行く時間にも制限があり大変難しいそうです。

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Rの部分は斉藤左官 斉藤氏の京都で鍛えた腕の見せ所です。
巧みな決め技に目を奪われます。

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見事に仕上がった大津壁です。

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見つめていると何か夢の中に居るようで、
感激の時間に浸らせていただきました。

何て素晴らしい美しい 「壁」 でしょうか!

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道具箱の中にある鏝は宝物です。
緊張から解放された時、皆でそれを手に取って
語り合う鏝談議は素晴らしい逸話です。

そして、何より最高なのはその笑顔です。

納得の行くまで、何処までも技を追求し続ける
本物の男の笑顔です。

良い仕事を見せていただきました。
やはり実際に現場で拝見するのがとても良い勉強になります。
この様な大きい大津壁の施工は滅多に見られません。
ありがとうございました。

そして、最初に申し上げたとても嬉しかった事・・・。

実は、このお店のオーナー様が、以前6月頃に弊社展示室に
お越し下さり、大津磨きをご覧になっていたのです。
その時立ち会わせていただいた私はその熱心なお気持ちに
お応えしようとあれこれご案内をさせていただきました。
偶然とはいえ、現場でご挨拶した時はとても驚きました。

オーナー様の本物を求めていただいた結果が、
この大津の大壁に繋がったのかと思うと嬉しくてたまりませんでした。

建材屋冥利に尽きる一日でした。

オーナー様、本当にありがとうございました。
心から感謝申し上げます。

こちらで頂くお料理とお酒はさぞ美味しい事でしょう。
一生懸命仕事して、いつの日か伺えるよう頑張ります。(夢)


投稿者 Tomizawa : 2007年09月22日 10:09