« 宇ち多 旨いもつ焼きと焼酎3,5杯で至福の時 東京立石 | メイン | 山本忠和 京都の左官伝統工法を受け継ぐ若武者 »
2009年02月08日
以前ご紹介した神田明神に隣接する宮本公園内に移築中の、
遠藤邸がほぼ完成しました。
足場が取れ全貌を現した遠藤邸は魅力的で迫力満点です。
黒しっくい塗りの凛とした姿に、ただただ見とれるばかりです。
南向きに面した表情はまた違った趣です。
千代田区有形文化財に指定された遠藤邸は戦前の木造建築の
商家で、昭和2年に内神田に建てられたものです。
遠藤家は江戸時代から続く材木商で、店舗・住宅兼用の材木商
ならではのこだわりの建物です。
昭和48年に府中に移築していましたが、伝統的な日本家屋の息遣いを
知ってほしいとの願いから神田への里帰りとなりました。
遠藤邸には凝った部分が随所にあり、先ず最初に目に付いたのは、
出窓を支える持ち送りの飾りでめちゃくちゃお洒落です。
小鳥が両側に今にも飛び立つかのように掘り出されています。
いきなりの可愛さにもの凄く感激です。
いよいよ玄関から中へ入ります。
内壁は殆どが美しい本聚楽土の切り返し仕上げです。
京都 佐藤左官工業所の藤原様が最終の仕上げを丁寧に行っています。
中外全ての壁に、藤原氏の鏝技が生きています。
柱、欄間、源氏襖の木材の素晴らしさに土壁の質感が見事に
調和した伝統的和の世界が広がっています。
襖を開けて振り返れば、竹で縁取った廻り縁が粋ですね。
竹と土がおりなす面の処理に絶妙な技が光ります。
何と美しい事でしょう。
茶室の壁と、これまたお洒落な下地窓に感激です。
材木商人がこだわる銘木を更に引き立てるべく、
土壁の塗り厚を調整し柱一本々のしっかりと存在感を主張させる
藤原氏の高度な技術に感動せずにはいられません。
佐藤左官工業所の本領発揮!
稲荷山黄土の本炉壇です。
研ぎ澄まされた高度な技が覗える逸品です。
ここで開かれる素晴らしいお茶会が想像されます。
2階の広間です。
どうですかこの伝統的日本家屋の息遣い!
網代天井、透し彫り欄間、襖、障子等、多くの部材は一端京都へ運び込まれ
十分な手入れを行ってから再び神田に持ち込まれました。
そして畳、土壁、どれもが究極のこだわりの世界です。
扇型の飾り窓です。
随所にお洒落心がいっぱいです。
竪繁障子もご覧の通り。
その美しさに声を無くします。
障子を開けると隣接する神田明神が見えます。
「戻って来ました」 「お帰りなさい」
ご挨拶の声が聞こえたような・・・。
本物の日本建築を見る機会が少ない今、
神田宮本公園にその良さを実感できる遠藤邸が竣工します。
多くの人に見て頂きたい本来の日本家屋です。
築約80年を越えて、2回の移築を行い更に活き活きと再生する日本家屋に
大きな感銘を受けました。
木や土、自然素材を扱う原理原則を踏まえた建築だから成せる技ですね。
改めて木造住宅建築の奥深さを知りました。
そして、本来追求するべき快適住居が何かを見せていただきました。
遠藤家の皆様、京都 中村外二工務店様、佐藤左官工業所様、
庭師 にわ耕様、ありがとうございました。
投稿者 Tomizawa : 2009年02月08日 11:36