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2010年07月02日
6月25日(土)・26日(日)
伊豆修善寺温泉 「柳生の庄」 に於いて、
数寄屋建築(左官)を語る会 が開催されました。
昨年「柳生の庄」様の大規模な改修工事が行われ、その左官工事は、
久住章氏が持てる左官技を大いに駆使した大舞台です。
氏は全国から腕利きの若い左官職人を集め、本格派数寄屋建築に
求められる究極の左官仕上げを見事に表現する事に成功し、
左官の真髄を作り上げました。
修善寺を代表する高級旅館「柳生の庄」様は全てにおいて
最高のおもてなしを誇る、海外からのVIPも多く宿泊される老舗です。
伝統的な数寄屋建築の文化をたっぷりと肌で感じる事が出来る名旅館です。
その工事に要した左官職人は40日で延べ1300人工!
若い左官職人は久住親方に実際の本格的現場を通して、仕事の難しさ、
厳しさを教わり、この上無い貴重な経験を積んだ最高の場であったことは
言うに及ばず、遠山記念館以来の近年では無かった左官の大事業を
成し遂げたのです。
玄関前のアプローチに入り振り返ると、そこにはとても爽やかな
修善寺の風が吹いていました。
これもおもてなし!
玄関でお客様をお迎えする静謐とした大きなオブジェです。
天井から下がる小壁のお洒落な下地窓の仕上げは、
京都の山本忠和氏による施工で、フリーハンドで縁取りを
決めた秀作です。
お迎えの間の久住親方と女将です。
お取り次ぎの間から玄関の方の眺めです。
玄関からおもてなしの心が溢れる素晴らしい空間です。
落ち着くムードのロビーに引き付けられるように入って見ると・・・。
ワァオー、螢壁(錆壁)ではありませんか。
間接照明で本当に螢が舞うように美しく見えます!
ロビー全体が螢狩りに来たような楽しさで、旅の疲れが癒されますね。
ひとつの錆が二重になって広がる仕上がりは、超美技の世界です。
客室の中でも一番の贅をこらした離れの「松の生」です。
部屋の仕様、庭園の眺めも最高の贅沢空間です。
その控えの間でくつろぐ皆さんです。
空気が素晴らしいですね。
可愛い化粧小部屋がとっても粋です。
戸あたり同士の狭い隙間にもきっちりと土壁の仕上げが施されています。
天井見切りの仕上がりも、ここまでやるかの驚きの精度で決めています。
久住親方こだわりの櫛型窓です。
座って見る位置から計算された曲面は、単純な円孤にならないよう、
工夫がされています。
黒磨き面の仕上げも逸品です。
この他、別の客間の火灯窓(花窓)にも親方のこだわりと、
遊び心が組み込まれています。
久住章氏曰く、
「素材を感じる左官壁、一目で分かる味わいのある壁に仕上げる。
均一の壁はクロスや吹き付けに見えてしまう。
それを変えるには鏝まで作って仕上げ面の表現を考え工夫すること。」
「柳生の庄」では、あらゆる土壁の味わいを楽しむことが出来ます。
室内の土壁・・・
廊下の土壁も・・・
そして、各部屋の浴室の土壁も・・・。
どの壁も久住親方が若い左官職人さんを指導し
互いに納得のいくまで塗り付けて仕上げたものです。
技は勿論、心のこもった塗り壁は美しいものですね。
さて、離れに向かう階段、通路、渡り廊下に更なる左官の技が、
繰り広げられています。
階段を上がると・・・。
灯りの下に何と美しい洗い出し・研ぎ出し土間仕上げが浮かび上がっています。
階段自体がその作品なのです。
丁寧に仕上げた面は愛おしくずっと撫でていたい風合いで、
素足で歩きたくなる絶妙な肌です。
這いつくばって舐めるように見ている様子を女中さんに不審そうに!?
見られてしまいました!!
渡り廊下に続く階段です。
床灯籠の光と庭からの日差しがあたり、美しい輝きを放つ
洗い出し・研ぎ出し床です。
廊下の石張りの両脇には、深草を使った洗い出しが施されています。
これまた綺麗な仕上がりですね。
突如、絵画のような庭園が広がります。
庭の美しさも言葉にならないほど素晴らしいものです。
腰掛待合いがある渡り廊下も庭園と一体になって、
とても粋なスポットになっています。
その足下を見ると、
ここにも洗い出しが施されていました。
奥のVIPルームに続く廊下も、
壁から床すべてに左官の技が。
ここは「武蔵の湯」の内湯です。
湯舟は掻き落とし・研ぎ出し仕上げで出来ています。
ずっしりと落ち着きのある印象で今までに触れたことの無い、
魅力的な柔らかい肌触りがとてもいいんです。
壁も腰上、下に配色を変えて洗い出し・研ぎ出しが施されています。
「つうの湯」の露天風呂です。
風呂底土間も掻き落とし・研ぎ出し仕上げで出来ています。
そこにそっと佇む東屋があります。
ゆっくりと湯に浸かり、のぼせ気味の体で腰掛けて露天風呂の景色を
楽しみます。
ふと、袖壁に目をやれば・・・。
景色も素晴らしいが、その壁も何とも言えない雰囲気を持つ癒される
仕上がりを見せています。
そうか、これが久住親方が言っていた「遊んでる壁 はかま流し藁」ですね。
何本かの長藁がすーっと流れるように伏せ込んであります。
若い左官職人さんが、7回も塗り替えて必至で仕上げた秀作です。
何とも言えない湯処で楽しむ贅沢なひとときです。
そして、各部屋には贅沢な部屋湯が付いています。
「松の生」では、更に贅沢にプライベート露天風呂まで
用意されています。
黒の掻き落とし・研ぎ出し仕上げの湯舟の、それはそれは美しいこと・・・
湯が掛かり渋く淡く黒い光を放っています。
暫し言葉を無くし見入ってしまいました。
やはり、触れた感触はすごく優しいです。
湯に移る梅雨時の新緑が見事です。
湯舟に浸かると全面均等に湯が溢れて、
洗い出し・研ぎ出しの肌に流れる様子は
とても美しいそうです。
また趣の違う半露天風呂です。
浴槽を桶のようにしつらえた、やはり全てを左官の技で作り上げた
快適湯です。
ここは、檜の香りがいっぱい漂う檜風呂です。
半露天で気分爽快ですね。
こちらも部屋付きの露天風呂です。
どれも究極のこだわりをもって仕上げられた作品です。
ゆっくりとお風呂を楽しんだあと、お部屋で庭を眺めながら涼みます。
何という至福の時間でしょうか。
数寄屋の文化については、1574年に来日したキリスト教宣教師
ジョアン・ロドリゲスが1634年に著した、日本教会史に記述があります。
その後、利休、古田織部、小堀遠州と、茶人の世界でいろいろな変化を
見せながら引き継がれて来ました。
そして現代、その数寄屋建築技術を蘇らせると同時に進化させ続ける達人として、
我らが 久住章氏がいます。
その氏が如何に凄い人であるか今回改めて良く理解出来ました。
どこまでも深い知識と技術を持ち合わせる久住親方は、
その、利休、織部、遠州より上をいく人かもしれません。
そして、遠山記念館以来と言われる本格的数寄屋建築 「柳生の庄」 様の
大工事を通して職人さんの素晴らしさ、その技の凄さに大きな感動を
覚えました。
久住親方はよく言われます。
「左官の仕事はこれが正しいとか良いとか言うのは無いんです。
今あるのは一時的なもので、技術はどんどん良くなります。
いいですか、自分で研究して造っていくんです。
死ぬまで勉強や!
それが自分にとってどうか、人が見てどうかと言うことなんです。」
若い左官職人に夢を与える「左官愛」溢れるお言葉です。
久住親方、柳生の庄オーナー 長谷川卓様、柳生の庄の皆々様、
幹事の植田俊彦様、ご参加の皆様、ありがとうございました。
最高の修善寺左官三昧に心から感謝申し上げます。
投稿者 Tomizawa : 2010年07月02日 09:56