感動の物語。
素晴らしい左官技との出会いがありました。
東京都のS邸。
そこには建築、庭園、その他見る物全てにおいて伝統的職人技が
生きる究極の館です。
左官に関しても、大津磨き、土壁水捏ね・糊さし、漆喰壁、漆喰蛇腹引きと
技のオンパレードで、施工は忍者左官 小沼充氏の手によるものです。
二つの洗面所のうち、一つは朱の大津磨き仕上げで、
いきなり凄い大津の世界へひきずり込まれます。
どうですかこの魅惑の空間!
思わず遠山記念館を思い浮かべる出来映えです。
こちらは白の大津磨きです。
何とも言えないキメの細かい肌は土の持つ魅力を最大限に引き出し、
渋い上品な光を放ち深く美しく輝いています。
濡れ縁に設置された粋な腰掛けです。
壁面は周りを優しい色合いに染める桃色の土で仕上げた大津磨きで、
とてもお洒落で粋なスポットになっています。
どれもが頬すりしたくなるようなしっとりとした仕上がりで、
見ていると気持がとても落ち着く癒し壁です。
本物を知りこだわりの目を持って日本の美技を求めるお施主様と、
本物を作り上げる為の技と手間を惜しまず取り組む職人との出会いは
感動の物語を創り出します。
本物に出会う機会の少ないこの時代に巡り会えた本当に素晴らしい宝物。
忘れかけた伝統の日本文化の素晴らしさと、
こだわりを拝見する事が出来ました。
ありがとうございました。
投稿時間 : 17:13 個別ページ表示
東京都左官職組合連合会 平成会(原田会長)が3月20日に、
職連会館に於いて大津磨き講習会を開催しました。
講師は大津磨きの匠、忍者左官 小沼充氏と、
小沼氏と共に伝統工法を若い左官職人に伝える、
木村左官工業所 木村一幸氏です。
ご両人の卓越した技量は左官の世界では衆知のところ。
その本物の技を学ぼうと若い職人さんが集まりました。
先ずは、基本となる材料の調合から始まります。
正確に計量されて灰土が出来上がりました。
引土も時間をかけて完成です。
材料作りから丁寧に作業する様子を見ていると、
既に大津磨きの施工の緊張感が伝わってきます。
材料調合のレシピを確認、記録する参加者の皆さんです。
間違いは許されません。
灰土の塗り付け開始です。
塗り付け順から、鏝の握り、運び方を指導する小沼氏です。
氏曰く、皆の中で誰か1人に手解きしている時に他の受講者が
それをどれだけ見て学ぶかが大事と、技術的なことだけでなく
どんな時も技を吸収しようという自らの意欲を持ち続けることが大切だと説きました。
そう言えば大分昔の話ですが、ある講習会で久住章氏の鏝さばきを
見学者の一番後ろで、同じ鏝を持って同じ握り、同じ鏝さばきをして、
体の動きもそれに合わせて忠実に踊るように真似ている若き小沼氏を
思い出しました。
その時は最初ふざけてるのかと思ったのですが・・・。
木村氏も優しく時には厳しく、あらゆる左官のノウハウを受講者に
指導していきます。
その奥深い豊富な経験と知識を惜しげもなく浴びせる姿は、
鏝を動かし続ける受講者背中を、早く本物に近づけるよう気持ちを込めて
推し進めているように見えます。
良き兄貴風が爽やかに吹き付ける職連会場です。
参加者全員が見やすい場所で同時に進行する小沼氏の
デモンストレーションが行われます。
いつでも見ることが出来る、これは受講者にとって最高に有り難い企画ですね。
引土の塗り付け開始!
引土押さえに掛かります。
最初より体の動かし方が確実に進歩しています。
呼吸を忘れているのかと思うほど仕上げ面と鏝面に神経を
集中しています。
オオッ 姿が映ってる!
いよいよ最後の追い込みです。
こちらも大津磨き独特の深い艶が出始めました。
黒光りしてきました。
赤いヤッケが鮮やかに映っています。
受講者のレベルの高さが伺える瞬間です。
実技全員参加の納得の講習会も無事終了し、最後に集合写真をパチリ。
皆さんそれぞれが得る物の大きい、内容の濃い講習会だったと思います。
若い職人さんが集まって技術を見せ合い競い合うのはとても素晴らしい
ことです。
良き仲間、良きライバルがいることは大切なことですね。
皆さんの今後が楽しみです。
全国で左官の塗り壁講習会が増えています。
本物の建築を求める声が大きくなり、本物が出来る左官職人さんを
目指す若い人が増えてきているからです。
本気で取り組む姿を拝見して、改めて本気で応援したいと思いました。
小沼氏、木村氏の若手左官のリーダーが受講者に左官愛を
思い切り注入した素晴らしい講習会でした。
皆様の今後の益々のご活躍をお祈りしています。
ありがとうございました。
投稿時間 : 14:33 個別ページ表示
杉並区上荻に位置する光明院の檀信徒会館(白石建設?元請)が、
ほぼ完成の運びとなりました。
外部の仕上げは我らの ?あじま左官工芸(阿嶋一浩社長 日左連青年部長)の、
左官職人さんが腕を振るって見事に仕上がった塗り版築壁が燦然と輝いています。
全面に施工された塗り版築の素晴らしいグラデーションは、
人々の目を引く、あっと驚く仕上がりでお見事の一言。
3Dでお見せしたい大迫力の仕上がりです。
基本的なものから試行錯誤の上で幾通りも作り上げられていくパターンには、
左官職人さんの経験と知恵がたっぷりと染みこんでいます。
全てが現場調合の材料の配合塩梅や、これだけの面積の材料の仕込みなど
半端ではない技術の集大成です。
しっかりとした押さえ込み、伏せ込みが行われ、
掻き落とすタイミングを、
事細かにチェックして指示を出しながら進めていきます。
十数人の左官さんが見事なチームワークで一気に仕事を進めていく様子は、
左官ミュージカルを大舞台で見ているかのような凄い迫力です。
いよいよ最後の仕上げに取り掛かります。
サッシ周りの清掃も大事な仕事で何処を見ても完璧な仕上がりです。
前島さん(中央)を中心として打ち合わせに余念が無い
あじま左官工芸の皆さんです。
最終段階を迎えても集中力を切らさず完成に向けて一致団結!
結束力と高い技術力を誇る チームあじま ならではの自信に裏付けられた
光景ですね。
あじま左官工芸の皆様、応援部隊の皆様お疲れ様でした。
皆様のカッコイイお姿をしっかり目に焼き付ける事が出来ました。
材料も沢山お世話になりありがとうございました!
皆様の益々のご活躍をお祈り申し上げます。
投稿時間 : 13:09 個別ページ表示
第10回 全国漆喰鏝絵コンクールが開催されました。
10月24日から11月30日まで、長八美術館で入選作品の
特別展が行われています。
ビッグニュースです!
埼玉の小野和司氏の作品が最優秀賞の栄冠に輝きました。
どうですか 素晴らしい出来映えです!!
正面に構えてじっと見ていると、実際に自分がその場の雪深い中、
穏やかな夕暮れ時に居る気持ちになって来ます。
そして周りの音を全て雪が吸収して、静か過ぎてシーンという音が
聞こえて来るような臨場感があります。
お見事!
上記の評論をご紹介します。
「雪景色の表現を長年にわたって追及してきた作者が、
正にその得意の分野で金的を射当てました。石灰の
カルシュウムの結晶は透明なので、乱反射によって
白く見えるわけです。透明な水が白い雪になるのと
同じ原理です。このような白の美しさを追求してきた
同氏の作品が最優秀賞を得たのは、漆喰(石灰)の
美しさを生かすことが鏝絵の基本であるという点からも
大きな意味があると思います。手前の水たまりに映った
建物の様子も美しく、雪の厚みと水面との対比が
心を引かれる効果になっています。」
本当に凄いし嬉しいです。
心よりお祝いを申し上げます。
おめでとうございます。
実は小野氏とは埼玉の訓練校でお目に掛かっていて、
それ以来の大ファンなんです。
この鏝絵も小野氏の作品で、どうしても欲しくてお譲りいただいたものです。
弊社事務所に飾らせていただき毎日眺めて楽しんでいます。
普段は左官業に精を出されて、合間に鏝絵を楽しんでおられる
根っからのアート左官さんなのです。
そして更に驚きなことに、こちらもお付き合いをいただいている、
島根県安芸市の左官、大櫃孝之氏の優秀賞作品です。
昨年第9回の時も優秀賞を取られています。
娘さんの成長をテーマに毎年出展されているそうです。
愛犬と遊ぶ様子が何んとも優しい情感が表れた鏝絵です。
可愛くてたまらない愛情が溢れた作品は、鏝技が随所に光る秀作です。
大櫃氏、今年のイケダコーポレーションのコンクールでも優勝している
実力者です。
鏝絵はそもそも施主に対する感謝の気持ちを表す為に、仕事のお礼として
家の戸袋や壁、土蔵の持ち送りに絵柄を塗り出したものだそうです。
鏝絵は本来の左官職人さんの心意気なのですね。
ご両人の鏝絵からも伝わる気持を込めることの大切さを身に沁みて
感じた作品展でした。
小野和司様、大櫃孝之様 ありがとうございました。
今後の益々のご活躍をお祈り申し上げます。
投稿時間 : 09:17 個別ページ表示
品川博氏の熱い職人魂を拝見したばかりの品川酔いが醒めぬ中、
24日(土)に南イタリアで大変お世話になった薩田建築スタジオ
薩田英男先生と、伊豆 長八美術館へ行って来ました。
早いもので開館25年になるそうです。
伊豆の長八は江戸の左官として大活躍した名工です。
本来の左官の仕事はもとより長八の漆喰鏝絵は西洋のフレスコ画に
優るとも劣らない壁画技術として、芸術界でも高い評価を受けています。
久し振りの長八の作品にお目に掛かれると思うと興奮しますね。
実はオープンした当初、業界の旅行やイベントがこぞって開催され、
6回ほど見学に来ていたのです。
その後20年以上も経っての見学に何か特別な思いが込み上げてきました。
玄間まで土佐漆喰となまこ壁が迎えてくれました。
綺麗に手入れされている美術館は開館当時と変わらない美しさです。
そのころは今一つ漆喰に対する知識が不足していて長八の凄さを
理解出来ずにいたと思います。大変遺憾なことです。
「春暁の図」です。
長八の代表作で漆喰を鏝で塗り付け、色彩を自由に駆使して
書きあげる技法は鏝絵の素晴らしさを余すところ無く伝える秀作です。
「近江のお兼」
絵を描く技術を狩野派に学び、彫刻の技術を修めて左官の技に応用し
漆喰を用いて華麗な色彩を施す長八独自の鏝絵の芸術を完成させました。
どれも躍動感溢れる作品に瞬きも忘れるほど凝視してしまいました。
話す声が聞こえそうな作品です。
大雨の音まで伝わる迫力です。
こちらを見つめられ、思わず心が和む作品ですね。
彫塑の技術が生んだ左官漆喰彫刻です。
足袋を履いているのが解る、見えない所に長八の遊び心が伺えるとあります。
う〜ん 本当に見ていて楽しくなってきます。
長八美術館に隣接するギャラリーでは、何と
藤田洋三先生の写真展が開催されていました。
なまこ壁の素晴らしさを迫力のある生きた写真で世界に伝える
藤田ワールドが展開されています。
ダブルで美味しい伊豆見学会となりました。
本物、良い物を見ることの大切さ・・・。
そして、昔も今もそれを作る人、それを伝える人々の偉大さを改めて
知ったように思います。
職人の職人による職人のための美術館。
その粋を凝らした左官の技を結集した世界にただただ感動あるのみです。
是非皆様もお出かけ下さい。
興奮する事間違い無しです。
投稿時間 : 11:16 個別ページ表示
ナチュラル&ハーモニック プランツ セミナー
小沼充氏、阿嶋一浩氏、左官を魅せる!
平成21年8月23日(日)午後1時より
横浜ノースポート・モールに於いて、ナチュラル&ハーモニック プランツ様の主催、
株式会社 磯崎工務店様協賛の、講師 忍者左官 小沼充氏と、あじま左官工芸 阿嶋一浩氏
による、土にこだわる左官職人をテーマにした技と笑いの素晴らしいセミナーが開催されました。
土壁の下地作りと、左官壁最高級仕上げ大津磨きの実演です。
ナチュラル&ハーモニック様は、自然のまま元気に育った野菜や食品、
麻やコットンなどの天然繊維の心地よい肌ざわりの衣類や生活雑貨、
日本古来の巧の技と最新技術を生かしたケミカルフリーの住空間など、
衣食住と生活を支える、徹底的にこだわった本物を追及する
ナチュラルライフ実践ショップです。
自然の優しい色合いのウエアーショップです。
自然情報が充実の書籍コーナーは必見です。
住空間のご提案は自然素材の家を推奨する、磯崎工務店様です。
磯崎工務店様は一貫して「環境と健康に負荷をかけない建築」をコンセプトとし、
天然素材に徹底してこだわった建築を続けておられます。
また、衣食住全般に渡る健康志向の方針を充分に理解した大工さんが施工を
行う、信頼と実績を持つ安心の工務店様です。
自然石の洗い出しの展示も、素材にこだわるご提案ですね。
この度のセミナーには、弊社取扱いの天然色土の展示もさせていただきました。
オオッ 小沼氏の究極の鏝が納めてある輪島塗の おかもち です。
これまた、ここまでやるかのこだわりですね。
会場の準備もほぼ整い、講習会前に腹ごしらえと磯崎工務店 磯崎専務様に、
昼食をご馳走になりました。
ナチュラル&ハーモニック プランツ内にある、レストラン&カフェ コアのお食事です。
注文させていただいたのは、勿論お薦めの「野菜が主役のPLANT`S LUNCH」です。
信頼ある契約農家から仕入れる自然栽培野菜で、どれも野菜本来の味をギュッと
蓄えたその物の美味しさを味わえる逸品でした。
注目のレストランの入口にはお待ちのお客様が並ぶほどの人気です。
やはり良いもの美味しいものには人々が集まるのですね。
さあ、いよいよセミナーの開始です。
講師は左より、磯崎氏、阿嶋氏、小沼氏です。
開催にあたり、磯崎工務店 磯崎真一専務様よりセミナーの趣旨の説明と、
小沼氏、阿嶋氏の紹介がありました。
早速、小沼氏が塗り付けに入ります。
今回は、下塗りの段階も見ていただく為に木摺りの下地を用意して、
漆喰下塗りから始まりました。
木摺り下地からの工程は現場でなければなかなか見られませんね。
各工程全般を阿嶋氏の解説付きで進んでいきます。
次に、半乾きの木摺り漆喰の上に土中塗を行います。
中塗土塗り付け後、直ぐに長ワラの伏せ込みに移ります。
これは土壁の割れ対策で、特に大津磨きを施工する場合には出来るだけの
対策を施す事が必要となって来ます。
長ワラを伏せ込んだ後には、長ヒゲコを打ち込んで二股に広げ押え込みます。
更に強化を図る仕様です。
会場は熱心な参加者の皆さんが、小沼氏の華麗な体の動きと鏝さばきに、
目も心も引き込まれていきます。
そして、阿嶋氏の伝統工法に付いての豊富な知識とウイットに富んだ
軽快で楽しい解説に、頷きと笑いを繰り返す参加者の皆様は本当に
楽しんで勉強している様子です。
注意:健康食品のセールスマンではありません。
さて、次なるは大津仕上げへ移ります。
こちらのパネルには予め中塗土の段階まで施工してあるものに、
灰土を塗り付け鏝でしっかりと押さえ込みます。
何度か灰土を押さえ込んだ後、掌を当てて水引具合を確かめます。
これが大津磨きの大きなポイントで間違いは許されません。
小沼氏の経験が物を言います。
今だと判断したら直ぐに手早く1回目の引き土を塗り付けます。
この時の小さな塗付鏝の動かし方が早くて凄い!
ご覧のようにこの明るさではカメラで捉える事が出来ません。
究極の技に皆さんの目が釘付けになります。
2回目の引き土を塗り終え最後の磨き込みに入ります。
鏝に体を預けるように、全身を使って鏝を滑らす様子は
まるで舞を見ているようで一緒に体が動いてしまいます。
遂に完成です。
見学者もホッと肩の力が抜ける瞬間です。
素晴らしい出来具合に拍手が起こりました。
出来たてほやほやの大津磨きを間近に見ながら、活発な質疑応答が
行われました。参加者皆様の感心の高さが窺えます。
大津磨きの施工は何度見ても良いものです。
決して手抜きの許されない、自然素材で作るからいい加減だと
拒否され失敗する真剣勝負の世界なのです。
全てが本物だから湧き出てくる自然の恵みと美しさは、こだわりを持つ
左官職人さんやお施主様にとって魅力ある物であると同時に、
最高の住宅環境を作り出す素材と技なのですね。
ナチュラル&ハーモニック プランツ様
磯崎工務店 磯崎真一専務様
「肥料を使わず自然に育った野菜は腐らずに枯れる」・・・目からウロコが落ちました。
自然素材を衣食住に生かす方法を今後もご指導のほどよろしくお願い致します。
ありがとうございました。
忍者左官小沼充様、左官エンターテイナー阿嶋一浩様、
ご両人の実に絶妙な演技と解説の素晴らしさに感動しました。
打ち合わせも無しにあれだけのパフォーマンスが出来るなんて何と凄いことでしょう。
塗り壁の良さを伝える最高の場になっている事は間違いありません。
このような素晴らしいセミナーをお施主様から建設に携わる多くの方々に、
もっと見て聞いていただきたいと思います。
是非、機会を増やしていただけることを願って止みません。
今後の益々のご活躍をお祈り申し上げます。
ありがとうございました。
投稿時間 : 12:23 個別ページ表示
平成21年5月24日
第6回 漆喰・土壁 技術講習会が開催されました。
どうした訳か今回もまた雨です。
しかしながら、全国から200人以上の熱心な方々にご参加いただき、
お陰様で雨を吹き飛ばす勢いの熱い講習会になりました。
9時の受付前から鏝・道具・書籍の前には人が集まっています。
テーマは、大津磨きと現代大津磨きです。
過去磨きのテーマは、土佐漆喰磨き、江戸黒磨き、伊勢磨きと
行ってきましたが、念願叶って大津を見せてもらう事になりました。
講師は、東京の小沼充氏、京都の山本忠和氏です。
そして、今回は特別ゲストに久住章氏をお迎えし、随時小沼氏、山本氏の
作業工程を追いかけて分かり易く解説をしていただきました。
小沼氏が仕上げた作品で、銀座 一草さんの沖縄土大津磨き壁の、
施工の写真も展示しました。
さて、平成会会長の阿嶋氏のentertainerな司会で講習会開始です。
灰土からの工程に合わせて、材料のレシピや、鏝の種類、その動かし方など
詳細に説明がなされていきます。
普段目にする事の無い、ワラスサの斧での叩き方、フルイ(箕)での分け方など、
実際に見なければ理解出来ない作業も演出してくれました。
小沼氏、山本氏両者が言葉のキャッチボールをしながらそれぞれのパネルに技を施し、
それを、久住氏がタイムリーに解説してくれます。
何と贅沢な事でしょう!
時には互いの進行具合をチェックします。
榎本新吉氏の愛弟子、小沼氏の代表的な仕事としては、東京芝の青松寺の
青の大津磨きの大壁と、座禅堂の赤の床現代大津磨きや、
沖縄県立博物館新館美術館、銀座 一草、その他多数の住宅、
店舗を仕上げられています。
山本氏は若くして京都の伝統工法を継承し、京都の重要文化財
安楽壽院の漆喰壁や土塀、九州佐賀城の本丸御殿、
住宅では、UHA味覚糖やミキプルーンの社長宅など多くの現場を
手掛けられています。
榎本新吉氏もお見えになり、若いご両人の技をじっくりと見ておられました。
見学者も、工程が進むにつれて大津磨きの魅力に引き摺り込まれ、
小沼氏、山本氏の鏝さばきを真剣に見入っています。
昼休みもご覧の通り、舞台周りは人が絶えません。
次に現代大津のオブジェが登場しました。
石膏とタナクリーム砂漆喰で出来上がった下地に、
現代大津のノロを刷毛で塗り付けます。
鏝を使わない局面であれ何であれ自由に磨ける技法のお披露目です。
ノロを塗り終えた後、水の引き具合を見て軍手をはめて、
手の平で磨き込んでいきます。
あれよあれよと言う間に光ってきました。
そして、磨き手はいつの間にか女性だけになっています。
現代大津の美しさ、面白さに会場も沸いています。
盛り上がった講習会も終盤に入り、
挾土秀平氏に総評と大津磨きの美しさと難しさを語っていただきました。
そして、秀平氏の腕をもってしても何回も失敗しながら覚えた事も・・・。
奥が深いんです、大津磨きは!
活発な質疑応答が交わされました。
材料について、鏝の動かし方、鏝の形状、実際の現場での対応、施工価格、
その他、終了時間を延長するほどの濃い内容でした。
講習会もお陰様で無事終了しました。
完成したオブジェは倉庫の2階へ引っ越しです。
小沼氏、山本氏に仕上げていただいたパネルも、
美しい大津磨きらしい輝きを放って仲良く2階で並んでます。
参加者の多くの皆さんの手を借りて、会場の後片付けも終わりました。
無事終了してほっとする瞬間です。
いつもながら皆さんの手際の良さに驚くばかりの私です。
不思議といつも片付けの時は雨が止むんですね、これが。。。
今回の講習会は分かり易かったというお声を沢山いただきました。
とても嬉しい評価です。
早い時期から小沼様、山本様にご準備いただきました。
弊社で扱う材料を使って試行錯誤を重ねた上で講習会に臨んで下さいました。
開催1ヵ月前には実際に京都の山本工業所様の事務所でご両人にリハーサルを
お願いし、その場に久住氏、植田氏、松木氏にも立会をいただきました。
良い評価をいただいたのも、これだけ心を込めて準備をして下さった結果だと思います。
素晴らしい左官愛溢れる出来事でした。
小沼充様
山本忠和様
お二人の左官職人としての心意気、お人柄に心底感動しました。
どれだけ感謝してもしきれません。
本当にありがとうございました。
久住様、挾土様、植田様、松木様、西川様
お忙しい時にもかかわらずお越しいただきましてありがとうございました。
平成会の皆様、いつもながら大きなお力をお貸しいただきありがとうございます。
本当に大きくて、強い、楽しい、左官力の凄い平成会の皆さんに感謝です。
そして、ご参加いただき盛り上げていただいた皆様に心からお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
次回も皆様のお役に立てる講習会が出来るよう頑張ります。
※弊社に材料は揃っています。
皆さんもチャレンジしてみませんか・・・大津磨き・現代大津磨き!
投稿時間 : 20:39 個別ページ表示
第6回 漆喰・土壁 技術講習会 好評受付中
5月24日(日)開催 富沢建材株式会社
詳しくは「富沢建材ホームページ 新着情報」 をご覧下さい。
ゲストに、久住章氏、植田俊彦氏、松木憲司氏、登場!
4月29日(水)春爛漫の日の出来事
講習会で講師をお願いしている、小沼充氏と山本忠和氏に、
打ち合わせを兼ねて大津磨きの施工をお願いしました。
場所は以前にご紹介した、京都上鳥羽 山本工業所様の左官基地、
事務所兼アトリエ&倉庫です。
「おはようございます」 と中へ入ると何とそこには、
久住章氏、植田俊彦氏、松木憲司氏が
お見えになっているではありませんか!
わざわざ打ち合わせを見に来てくださいました。
そして、講習会当日も皆さんお越し頂けるそうです。
感激です。
両者(手前 小沼氏、奥 山本氏)材料の仕込みを確認して早速、灰土の塗り付け開始です。
講習会当日の状況を想定し、アドバイザー3氏の意見も伺いながら
施工を進めていきます。
開始直後から、それはそれは土の話、スサ、のり、鏝、etc・・・
左官情報の宝箱状態で大盛り上がりです。
その中、真剣に引き土を塗り広げ押えに掛かる小沼氏。
鏝表に神経を集中してじっくりと押え込む山本氏です。
両者の鏝捌きに一時も目が放せません。
水引のタイミングに大きく左右される大津磨きは何度見ても飽きない、
左官壁の中でも特に際立った仕上げ技だと思います。
どうですか、この大津壁の美しさ!
山本工業所のアトリエが更に魅力的になりました。
お陰さまで弊社講習会の準備もだいぶ進んで参りました。
本番では皆様と一緒に大津磨きの世界を楽しみたいと思っております。
まだ人数の余裕がございますので、奮ってのご参加をお待ち申し上げております。
投稿時間 : 18:17 個別ページ表示
第6回 漆喰・土壁 技術講習会 好評受付中
5月24日(日)開催 富沢建材株式会社
詳しくは「富沢建材ホームページ 新着情報」 をご覧下さい。
吉村弘氏 吉村興業株式会社
モルタルマジック 究極の擬木・擬岩の世界にご案内します。
吉村興業と言えば全国左官技能競技大会で3名の日本一を
出し、全国の美術館、博物館、重要文化財の復元などで
高度な技術を余すところなく発揮し続ける超エキスパート集団です。
代表の吉村弘氏の類まれな技術とセンスを、ご長男の吉村誠氏を
はじめとする吉村興業の皆さんが引き継ぎ多方面で活躍されています。
その中の一つの作品に、中野 沼袋にある吉村氏が施工した
和食処「田能久」さんがあります。
どんな作品かわくわくしながらお尋ねしました。
おっと いきなり入口から迫力の擬岩で驚かされます。
いやー 良く出来てますね本当に!
そして店内へ入れば更に驚きの擬木の世界が広がっています。
良く見ると ええっ これが本当にモルタルで出来ているの!?
と、言いたくなる見事な仕上がりです。
どうしてこんな事が出来るのか?
本当に細かいところまで実に繊細に出来ています。
この質感を表現出来るのは、本物を見る目と芸術的センスを
持ち合わせて初めて可能な技だと思います。
これをあっという間に短時間で仕上げるそうです。
どのパーツを見てもモルタルとは思えない仕上がりです。
原木の表情とは打って変って、板目の出来映えも素晴らしいです。
擬木? と、あっけに取られて暫くの間見入ってしまいました。
「田能久」 さんの美味しいお料理と、こだわりの焼酎をいただきながら、
左官の技や、思い出話に花を咲かせる吉村弘氏と
月刊左官の編集長 小林澄夫氏です。
お付き合いの永いご両人のお話を伺っていると、まるで左官の美しさ繊細さを
デュエットで歌い合う詩人のように聞こえます。
そして、魅力溢れる左官の世界へ招いてくれます。
左官と焼酎で気持ち良く酔った夜・・・
また新たに、左官の心意気と奥深さが心にズシリと浸みたのでした。
吉村弘様 小林編集長様 大変勉強になりました。
ありがとうございました。
投稿時間 : 12:54 個別ページ表示
第6回 漆喰・土壁 技術講習会 好評受付中
5月24日(日)開催 富沢建材株式会社
詳しくは「富沢建材ホームページ 新着情報」 をご覧下さい。
大津磨きの素晴らしさを皆様に見ていただきたくて企画しました。
左官が表現する仕上げの中で、最高と言われるのが大津磨きです。
壁としての大津磨きは、輝きの中にも土の優しさが表れています。
床の磨きは強さの中にも、やはり心地良さが感じ取れます。
足袋や素足で歩く感触は実に爽やかです。
榎本新吉氏が生みだした現代大津は、どんなオブジェでも無限の表現を
可能にするこれからの技法です。
何れも考え抜かれた左官が表現する究極の技です。
今回の講習会でそのテクニックとこれからの左官の可能性を
皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。
左官の新時代の幕開けになるかもしれません。
まだまだ、ご参加いただけます。
皆様のお越しをお待ちしております。
詳しくはこちら
投稿時間 : 18:25 個別ページ表示
第6回 漆喰・土壁 技術講習会 好評受付中
5月24日(日)開催 富沢建材株式会社
詳しくは「富沢建材ホームページ 新着情報」 をご覧下さい。
大津磨き、現代大津のエキスパートで、榎本新吉氏の愛弟子 小沼充氏、
人呼んで忍者左官がお贈りするお料理教室みたいな?
紙スサのほぐし技教室です。
先ずは紙スサについて、今回の逸品は 「雁皮」 がんぴ という、
ジンチョウゲ科の落葉低木で自然に自生する植物で作った紙スサです。
雁皮は生育が遅く栽培が難しいので山地に野生しているものを採取しています。
その繊維は細くて非常に強く、紙の王様として高級和紙に使用されています。
その雁皮を以前より使いこなす小沼氏に大津磨き用の
引き土に入れる為の紙スサの戻し方をご指導いただきました。
トレードマークの鉢巻姿で鏝では無く、
ハサミを持って雁皮を切り出しました。
1?各位にサイの目に切っていきます。
土1?に対して雁皮10g(1枚)の配合です。
キッチリと軽量します。
これを綺麗な水の中へ入れます。
紙質が良いので沈んでいく様子がとても綺麗です。
それを笑顔でかき混ぜる小沼氏です。
でもこの表情はイタズラを企んでいます・・・
何かが あると思います!
このような時は気を付けなければなりませんよ皆さん!!
話は戻りますが、充分に水が浸み込んでから、
それをザルに空けます。
水を切り一塊りにまとめてから、掌で握り適度な水分が残るように
再度軽く水を絞ります。
それを濡らした木の板にのせ木小刀で端から叩きほぐしていきます。
慣れた手付きでリズム感良く叩きます。
簡単なようですが、どうしてどうしてテクニックが必要とか。
徐々に繊維がほぐれていくのが分かるような気がします。
そして、それをくるりと巻いて、
また、水の中に入れ泳がせます。
その泳がせ方も手の動きを見ていると独特の作法ですね。
再度ザルに空けます。
それを束ねてまた叩く。
これを繰り返します。
その後、3回目を終え水に泳がすと、
どうですか、先程の時よりかなりほぐれて殆ど繊維が分散しているのが
分かりますね。
今度は静かにザルに空けて、
ゆっくり水を切ります。
乱暴に振ったり、手で触ったりすると折角ほぐされた繊維が
絡まってしまうそうです。
とてもデリケートなんですね。
そして、ゴミには絶対注意!
全てがパーになります。
手を使わずゆるりと回しながらまとめ、
いよいよ土の配合になります。
ここまで10gの雁皮をほぐすのに、慣れた小沼氏で3回位ですが、
慣れない内は最低5〜6回は行う必要があるそうです。
大変な手間ですね。
規定量の清水に雁皮紙スサを入れ分散させます。
次に、色土をかき混ぜながら混入し、
その後直ぐに白土を入れます。
これで引き土の完成です。
一週間ほど寝かすと丁度良くなるそうで、これであの大津磨きが仕上がるのですね。
紙スサの種類によってはほぐしにくい物もあるそうですが、この雁皮紙スサは
ほぐし易いように製造段階で注文を付けているそうです。
このように、全てに小沼氏の徹底したこだわりの目を持って厳選された材料が混ざり合う時、
それぞれの素材の良さが何倍にもなって生かされ壁になって息衝くのです。
イタズラ好きな氏ですが(笑)、いや〜本当に勉強してますね。
それプラス、氏の経験に裏付けられた技に更に左官の奥深さを学びました。
ありがとうございました。
5月24日(土) いよいよ 小沼氏、山本氏の
大津磨きの講習会が開催されます。
その究極のこだわりを充分にご覧頂きたいと思います。
皆様のご参加をお待ち申し上げております。
好評受付中です。
投稿時間 : 15:47 個別ページ表示
第6回 漆喰・土壁 技術講習会 好評受付中
5月24日(日)開催 富沢建材株式会社
詳しくは「富沢建材ホームページ 新着情報」 をご覧下さい。
弊社講習会の開催案内を持って榎本新吉氏へご挨拶に伺いました。
するとそこには (有)左菊 の鈴木氏がお見えになっていて、
榎本氏の作品を手に磨きの話で盛り上がっていたのです。
どれどれと拝見すれば、また新しい展開に驚かされます。
この前まではベージュ・茶・赤系が主流でしたが、
今回は白・黒で単色ながら立体感と色合いの深みが凄いんです。
留まるところを知らない千石磨きです。
そして、とても嬉しくなる事がありました。
最近に無く榎本親方がとても上機嫌で、鈴木氏が凄い事をやったと
ベタホメでその喜びようは大変なものでした。
「俺を超えたよ、こいつは!」 えっ!!
それは何かとキョロキョロしていると、
親方が言いました 「パックに行って見てきなよ、何て言うかな ワッハッハ!」
パックに移動し早速拝見。
うむ、なるほどかなり目を引く大胆な紋様の緑色の磨きです。
何が凄いのか榎本親方は何も話してくれません。
でもじっと見ていると引き込まれる何かがあります。
何処かで見た事がある様な、懐かしいような紋様に話題は尽きません。
作品を手に 「偶然です」 と謙虚に語る鈴木氏の笑顔はカッコイイですね。
皆さんもパックへ行って一緒に答えを探しませんか?
榎本親方の言う 「凄い」 は何かを・・・。
こちらは 村瀬左官 村瀬氏の作品で磨きと洗い出しの作品です。
これも親方のお気に入りで飾られています。
小さくても一生懸命な左官の技が生きていますね。
毎度の事ですが、お邪魔する度に進化している千石磨きに、
ため息が出るばかりです。
そして、若い人が作った良いものに出会うと、子供のごとく、我が事のように
喜ぶ榎本氏の姿に、真の左官愛を見る事が出来ました。
でも、最後に落ちがありました。
鈴木氏の作品に榎本氏曰く、
「色が気にいらねーな〜 ワッハッハ」 って!
おわり。
投稿時間 : 17:51 個別ページ表示
京都の左官伝統工法を若くして受け継ぐ、山本忠和氏をお訪ねしました。
山本氏がどんな仕事をしてるかって?
先ずは、京都巡りと参りましょう。
日本三大祭りの一つ祇園祭りが開催される八坂神社の西楼門です。
この八坂神社の漆喰塗りは山本氏の手によるものです。
重要文化財 安楽壽院の書院です。
1795建立の美しい書院を庭園から眺めます。
この漆喰壁も山本氏の技を駆使した作品です。
そして今、その書院を取り巻く土塀の修復工事に取り組んでいます。
永い時を経た、大きく長い本格土塀の弱くなっている土質に対処する為、
山本氏の高度な技量が発揮されます。
長期に渡る改修工事は我々の想像を超える大変な作業になる事でしょう。
その他、各地に点在する文化財に山本氏の鏝技が生きています。
どうですかこの素晴らしさ。
見る者の心に漆喰の美しさが写し込まれます。
その技術を絶え間なく研究し続ける左官基地、
山本工業所をお尋ねしました。
先ずは、1階の作業場件倉庫を拝見します。
何処を見ても、建材店も真っ青なキッチリと整理整頓された用具、工具、材料です。
この真似はなかなか出来ませんよ本当に・・・。
山本氏のこの几帳面さが、仕事に生きているのですね。
伝統的工法の実態を見極めるため、改修現場の壁や蛇腹の一部を持ち帰り、
研究を重ね施工に生かしていきます。
2階へお邪魔します。
オオッ! 何だここは!?
全く想像もしていなかった空間が広がっています。
これが、左官店の事務所ですかぁ〜
木と土とダルマストーブのファンタジックなアトリエです。
木のらせん階段には参りました。
夢を見ているようですね。
室内の表札代わりに彫刻の鏝にご挨拶をいただきます。
何やら趣のある重厚な木の飾り箪笥です。
開けていただき中を拝見すれば、やはりそこにはこだわりのコレクション!
凄いの一言です。
鏝を手に取ると山本氏の表情が引き締まり、仕事への情熱が伝わって来ます。
同行していただいた小沼充氏も真剣に鏝を検分します。
暖かさがじんわりと浸みてくるダルマストーブを囲み鏝談議が続きます。
建築に必要な道具は数々あれど、鏝ほど種類の多い物はないでしょう。
カタチ、大きさ、固さ、金質、焼き具合、材料によって、仕上げ方によってと、
限りがないほどです。
お話を伺っているうちに、左官の奥深さと魅力、面白さが分かってきたような気が
しました。
しかし何て過ごしやすい空間でしょうか。
時の経つのを忘れてしまう、ここで塗り壁の打ち合わせが出来たら最高でしょうね。
山本氏の作る世界は実に素晴らしく見事です。
氏を一言で言うとカッコイイ左官屋さん。
行動を拝見していると、常に物事に対して真剣、際だつ集中力の持ち主で
几帳面、それでいて時には やんちゃ? と魅力一杯の人柄でした。
驚くのは、重要文化財等の伝統工法を地道に確実にこなしながらも、
現代に要求される新しい壁や土間の左官の世界を想像し造り、仕上げているところです。
山本氏の素晴らしい左官の世界を沢山勉強させていただきました。
そして、家族思いの優しさも。
お忙しい時にも拘わらずお付き合いご指導をありがとうございました。
山本様の今後の益々のご活躍をお祈りしております。
投稿時間 : 14:47 個別ページ表示
以前ご紹介した神田明神に隣接する宮本公園内に移築中の、
遠藤邸がほぼ完成しました。
足場が取れ全貌を現した遠藤邸は魅力的で迫力満点です。
黒しっくい塗りの凛とした姿に、ただただ見とれるばかりです。
南向きに面した表情はまた違った趣です。
千代田区有形文化財に指定された遠藤邸は戦前の木造建築の
商家で、昭和2年に内神田に建てられたものです。
遠藤家は江戸時代から続く材木商で、店舗・住宅兼用の材木商
ならではのこだわりの建物です。
昭和48年に府中に移築していましたが、伝統的な日本家屋の息遣いを
知ってほしいとの願いから神田への里帰りとなりました。
遠藤邸には凝った部分が随所にあり、先ず最初に目に付いたのは、
出窓を支える持ち送りの飾りでめちゃくちゃお洒落です。
小鳥が両側に今にも飛び立つかのように掘り出されています。
いきなりの可愛さにもの凄く感激です。
いよいよ玄関から中へ入ります。
内壁は殆どが美しい本聚楽土の切り返し仕上げです。
京都 佐藤左官工業所の藤原様が最終の仕上げを丁寧に行っています。
中外全ての壁に、藤原氏の鏝技が生きています。
柱、欄間、源氏襖の木材の素晴らしさに土壁の質感が見事に
調和した伝統的和の世界が広がっています。
襖を開けて振り返れば、竹で縁取った廻り縁が粋ですね。
竹と土がおりなす面の処理に絶妙な技が光ります。
何と美しい事でしょう。
茶室の壁と、これまたお洒落な下地窓に感激です。
材木商人がこだわる銘木を更に引き立てるべく、
土壁の塗り厚を調整し柱一本々のしっかりと存在感を主張させる
藤原氏の高度な技術に感動せずにはいられません。
佐藤左官工業所の本領発揮!
稲荷山黄土の本炉壇です。
研ぎ澄まされた高度な技が覗える逸品です。
ここで開かれる素晴らしいお茶会が想像されます。
2階の広間です。
どうですかこの伝統的日本家屋の息遣い!
網代天井、透し彫り欄間、襖、障子等、多くの部材は一端京都へ運び込まれ
十分な手入れを行ってから再び神田に持ち込まれました。
そして畳、土壁、どれもが究極のこだわりの世界です。
扇型の飾り窓です。
随所にお洒落心がいっぱいです。
竪繁障子もご覧の通り。
その美しさに声を無くします。
障子を開けると隣接する神田明神が見えます。
「戻って来ました」 「お帰りなさい」
ご挨拶の声が聞こえたような・・・。
本物の日本建築を見る機会が少ない今、
神田宮本公園にその良さを実感できる遠藤邸が竣工します。
多くの人に見て頂きたい本来の日本家屋です。
築約80年を越えて、2回の移築を行い更に活き活きと再生する日本家屋に
大きな感銘を受けました。
木や土、自然素材を扱う原理原則を踏まえた建築だから成せる技ですね。
改めて木造住宅建築の奥深さを知りました。
そして、本来追求するべき快適住居が何かを見せていただきました。
遠藤家の皆様、京都 中村外二工務店様、佐藤左官工業所様、
庭師 にわ耕様、ありがとうございました。
投稿時間 : 11:36 個別ページ表示
第5回 漆喰・土壁 技術講習会 好評受付中
10月19日(日)開催 富沢建材株式会社
詳しくは「富沢建材ホームページ 新着情報」 をご覧下さい。
神田明神のすぐ隣にある宮本公園内に大きな古民家の移築工事が
行われています。
昭和2年に神田橋に建築された店舗兼住宅で、その後府中に移築、
更にこの度神田への移築となりました。
大手材木問屋の建物だけにしっかりとした蔵作りの構造は2回の移築に
びくともしません。
この移築にあたっては、古民家再生で有名な京都の中村外二工務店様が施工、
左官にはやはり京都の名工、佐藤左官工業様が入っておられます。
外部仕上げは、黒漆喰塗だそうです。
本日は二階の屋根下からのハンダ中塗が行われていました。
上げ裏も全て塗物です。
横長手のハンダ塗りではかなりの長さを糸と定木貼りで、
正確に面を出していきます。
糸に合わせ下付けをする斎藤氏です。
下面を決める為、定木を貼っていきます。
藤原氏(前)が鍛え上げられた技で正確に位置決めをしていきます。
ビシッと決まりました。
下場を決めていく、本田氏です。
しばし藤原氏の鏝さばきを見せていただきました。
ハンダを鏝板に取り、使いこなした地金の鏝の先に、
少しづつひょいっと乗せて、
正確にポイントへぶつけて抑え込んでいきます。
そのリズミカルな動きに思わず見惚れてしまいました。
その後定木ずりをしますが、当たる部分を見てもさすが殆ど凹凸は有りません。
完璧な面を作り出します。
そして定木を慎重に外します。
最後に鏝を当てて刷毛を引いてハンダ中塗を終えます。
まるで仕上げ塗の様な丁寧さです。
今日は定木を使う本物の技をたっぷりと拝見させて頂きました。
ピーンと通った角面はお見事です!
見ているこちらも気持が一本通った様な爽快な気分になりました。
実はこれだけ長い角を通して見せるには何やら隠し技があるようです。
伝統左官工法の隠された秘密にもっと迫ってみたくなった一日でした。
中村外二工務店 後藤様、
佐藤左官工業 藤原様、本田様、
斉藤左官 斎藤様、
ありがとうございました。
引き続き勉強させて下さい。よろしくお願い致します。
投稿時間 : 09:02 個別ページ表示
6月7.8日 第8回 左官と鏝鍛冶の交流会が開催されました。
本格的な左官技術講習会の元祖、篠山市左官技術研究会の
皆様が主催される内容は全国への左官情報の発信源となっています。
何しろ全国から参加される170名の方々のレベルが滅茶苦茶高いんです。
今回のテーマは漆喰黒磨きです。
そのレベルに見合う材料作りも大変です。
講師はご存じ久住章氏です。
左官の技術を広める為、全世界を飛び回るカリスマです。
その鏝さばきは、いつ見ても驚きと感動を覚える素晴らしさです。
人に訴える奥深さを実感しました。
弊社講習会でお世話になりました京都の奥田信雄氏です。
凛とした姿に究極の水捏ね仕上げの風合いが思い起こされる
オーラ出しまくりの氏です。
奥田氏のアドバイスに真剣に聞き入る参加者達は、
そのノウハウを出来る限り吸収しようと必死です。
久住誠氏も若者代表として、持てる力を存分に発揮され、
参加者の注目を浴びていました。
ご参加の殆どの方が腕に覚えのある左官集団で、
それぞれが技を競う様子は、凄い迫力の世界でした。
一度壁に向かえば息抜きする事無く一気に仕上げていく
エンターテイメントです。
どうだい、この仕上がり具合は!
と、言わんばかりの映り具合は流石です。
いやー、勉強になりました。
これだけの名のある技の持ち主が集まる講習会は他には無いでしょう。
そしてコーチ陣の凄さも必見です。
間違いなく全国の左官の世界に良い刺激を与える震源地です。
篠山の皆様、いつも本当にありがとうございます。
建材屋としても参考になる事ばかりです。
弊社の講習会も少しでも篠山に近づけるように頑張ります。
そして、左官屋さんのお役にたてるよう精進してまいります。
篠山 万歳!
心から感謝申し上げます。
ありがとうございました。
投稿時間 : 13:29 個別ページ表示
5月25日(日) 第4回 漆喰・土壁 技術講習会を
開催致しました。
念願叶っての奥田氏の講習会は実に奥深く、
本物は何かを学ぶことが出来ました。
お陰様で皆様からご好評を戴く内容になりました。
当日の午前中はあいにくの雨でしたが、
参加者の皆様の真剣さに会場は熱気ムンムンでした。
今回はスクリーンとテレビモニター2台を使って、
鏝さばきをアップで見て頂けるように工夫してみました。
奥田氏の凄さをより分かり易く表現する為に!
詳しくは後日ご報告致します。
取り敢えずは、無事終了のご報告まで。
投稿時間 : 10:03 個別ページ表示
9月15日(土) 竹中工務店東京本社に於いて
社団法人 東京建築士会 が主宰する 「銀座建築デザイン大学」
が開催されました。
テーマは
『建築技術技能教育としての左官伝統工法の美と用を学ぶ』
『日本の伝統工法「鏝絵」の世界へようこそ!!』 です。
先ず講義は講師 鈴木 光氏
(鈴木建塗工業(株) 代表取締役)による、
「日本各地の建築物と左官仕上げについて」
1.日本の壁とは
2.左官道具のいろいろ
3.左官材料の硬化のメカニズム
4.養生の方法
など、パワーポイントを使て解り易く、他では聞けない
左官の世界を詳しく面白く聞かせて頂きました。
鈴木先生は日本各地で左官と塗り壁の良さを広める為
公演活動をされています。
次に、
ワークショップ 『日本建築の伝統と技を知り鏝絵を描きましょう』 が、
講師 大久保 雅一氏
(ミヤビ工芸 代表)
によって行われました。
1.下絵を描く
2.色漆喰絵具の作り方
3.鏝絵の制作順序
4.養生の方法
など、実際に制作し指導してもらえる講義です。
大久保先生の素晴らしい作品も展示されています。
さあ、一通りの講義を受けて制作開始です。
予め用意された鮮やかな色漆喰です。
いつもお世話になっているイケメンワークマン
綿引氏が参加されていました。
氏の技を拝見しましょう。
先ずは、透明なトレースシートにデザインを
書き込みます。
次にトレースシートをカットし、型抜きを作ります。
型抜きしたシートを塗り付ける板にテープで止めて
固定します。
今回キャンパスとして使うのは
田川産業(株)の 「ライミックス」 です。
そして色漆喰の塗り付けです。
濃色と薄色を巧に混ぜ合わせて銀杏の葉を作っていきます。
さすが綿引氏、扱い慣れた自前のこだわり鏝で型に塗り付けます。
型に沿って自然に厚みを付け、塗り上げたらシートを外します。
ゆっくりとめくっていくと・・・。
オオッ!
見事に塗り込められた秋の銀杏の葉です。
このあたりから周りの視線を集め始めます。
イヨッ 綿引 カッコイイぞっ!!
これまた、秘蔵の美しい鏝を取りだし葉の縁を、
丁寧に揃えていきます。
細かい所まで綺麗に納めました。
秋を彩る銀杏の葉。
とても素敵な出来映えです。
完成品を手に納得の綿引氏、イイ顔してますね。
他のご参加の皆さんも、終始笑顔で楽しんでおられ、
作品も秀作が多く大久保先生も驚いておられました。
自然素材で作る作品は人の心を癒し笑顔を生んでくれます。
左官の技術と自然素材の材料で造り出す世界は健康的で
素晴らしく、大きな可能性を秘めている事を実感しました。
今日の講義は大変有意義な内容で、これからの家造りにおいて
とても大事なことを教えて頂きました。
東京建築士会の皆様、鈴木先生、大久保先生、
そして、ご参加の皆様、ありがとうございました。
投稿時間 : 12:29 個別ページ表示
埼玉県菖蒲町の小野左官工業所の小野和司様を
ご紹介します。
前回ご紹介した埼玉県左官業協会の講習会にお邪魔した時に、
幸いにもお目に掛かる事ができました。
小野氏は静岡県松崎町で開催される「全国漆喰鏝絵コンクール」
に出展され毎年、優秀賞、入賞を重ねておられる名人です。
早速作品を拝見させて頂きました。
すっ凄い! 何て素晴らしい鏝絵でしょう!!
いかがですか?
今にも動き出しそうな龍や、生き生きとした果物などその技術の高さは
写真でもお分かり頂けると思います。
厚みのある仕上がりは見る角度によって臨場感を生む影を作り、さらに鮮やかで
自然な色彩が最高の演出をしています。
「多くの左官仕事をこなしながら、その合間に鏝絵を仕上げるのは
大変です」と小野氏。
でも、その目は楽しみながら塗って描き込む芸術家の輝きを発していました。
素晴らしい絵心とたぐいまれな技術から生まれる作品は人の心を
癒してくれる秀作です。
そして左官技術の進化した姿を見せて頂きました。
小野名人の作品を見たい方!
実は上のブドウの鏝絵を譲って頂きました!!
弊社に展示しております。
皆様、是非実物を見てその素晴らしさに浸って下さい。
宝物がまた一つ増えました。
小野氏に心から感謝申し上げます。
ありがとうございました。
投稿時間 : 16:32 個別ページ表示
1月25日 東京足立区の松本左官工業所 「松本元意」氏
にお声掛けをいただき、東京上野御徒町にある地上7階地下1階の大掛かりな
改築現場を見学させていただきました。
松本氏は昨年叙勲されている名工で、かねてよりご指導をお願いしたいと
思っていたところでした。
築40年を経た建物の全面大改造です。
何と全ての部屋、廊下、階段の壁を左官塗りで仕上げて、
ギャラリーに変身させる大イベント?なのです。
コンクリートの構造物を覆う物全ての物が取り除いてあります。
ご覧の通り様々な下地が顔を出します。
コンクリート、ブロック、フレキ、コンパネ、タイル他、下地のオンパレードです。
埋め込まれているシャッターのレールも取り外します。
階段上を見上げる松本氏です。
建物を丸裸にするのは、さぞ大変な作業だったと思います。
そして、ここから松本氏の真骨頂!下地作りが始まります。
氏曰く如何なる状況でも下地の善し悪しで仕上がりが違ってくると断言。
地下1階はすでに下地の塗り付けが施されていました。
驚くことに何処を見ても均一の塗上がりで、あらゆる条件が重なる下地に
起こりがちな吸水違いの色ムラがまったく見あたりません!
さすがです。
施工はまず、日本化成(株) アートシーラー をローラー塗します。
安定した給水調整が出来るそうです。
更に 吉野石膏(株) Bドライ を下こすりしあらゆる下地に対応出来る状態にします。
万全な下地調整が終わると、次は 吉野石膏(株) K−YN の中塗りです。
数?から20〜30?まであらゆる面にしっかりと塗り付けます。
このK−YNは一時生産を中止していましたが松本氏の要望により復活しました。
バーミキュライトを骨材とするこの材料の特徴は、軽量、優れた付着性、断熱、
耐火の他、アク対策にも有効な中塗り材で松本氏の多くの現場で使用されて
いるそうです。
この様に松本氏はあらゆる材料を実際に使用しその性能を見極めます。
その経験と知識は、吉野石膏株式会社、日本化成株式会社の商品開発に
多大な貢献をされています。
日を替えて、2月14日に再び見学させていただきました。
3階フロアーが仕上がっていました。
仕上げ材は 日本化成(株) シュークル です。
これは漆喰調淡色系内装仕上げ材で自然な風合いが良く出ています。
いやー 実に見事です。
松本氏の言う下地有りきの意味が分かりました。
しっかりとした厚みを感じる壁です。
室内の心地よさは勿論、その重厚さに暫く見入ってしましました。
左官の技を見た感じです。
階段下です。
ここはまだ中塗りの状態ですが、これも左官の成せる技で如何なる形状も
ご覧の通り。隠すどころではないオープンで見ていただきましょう。
いや、見せなきゃ・・・。 どこまでも左官塗りなのです。
地下に入ると思わず、ワインセラー!?
と、考えるのは私だけでしょうか。
質問にも丁寧に答えてくれる松本氏です。
所々でここは手が掛かったとさらりと言ってのける・・・
よく見ると凄い! 大ゴトなのです。
そこにオーナーがご登場です。(左側)
松本氏とは20数年のお付き合いでご自宅の壁もすべて塗られているそうで、
お話を伺えば伝統工法の壁についてもかなりの知識をお持ちです。
究極のこだわりで、この建物も松本氏の技に委ねておられます。
ギャラリーの目的は近くの芸術大学の皆さんに気軽に利用してもらうことだ
そうです。さぞ学生さんの励みになることでしょう。
こだわりのオーナーと技ありの左官さんの理想的な関係で、
完成は松本左官さんの仕事が終わった時と笑っておられました。
職人さんを大事にされているオーナーの心意気に感動です。
40年の歴史も一緒に詰まった素晴らしい建物になるでしょう。
完成の日が待ち遠しいです。
オーナー様、松本様、ありがとうございました。
また、お邪魔します。
投稿時間 : 15:08 個別ページ表示